お店で目にする価格の表示について、4月1日からは一目で税込み価格がわかる表示が義務づけられます。
消費税における「総額表示義務」とは、商品を販売したりサービスを提供したりする「消費税を納める義務がある事業者」に対して義務付けられたものです。
値札やチラシなどにおいて、商品やサービスの価格を表示するときに、消費税額を含めた価格を記載しなければなりません。
対象となるのは、一般消費者に対して商品の販売やサービスの提供を行う消費税課税事業者です。事業者間で取引をしている場合は、総額表示義務の対象から外れます。
つまり、一般消費者に対して商品を販売しているEC事業者は対応する必要があり、企業に対して商品を販売しているEC事業者は対象とはなりません。
財務省のページによると、消費税における「総額表示義務」を実施する目的は、消費者の利便性を上げるためです。税抜価格の表示だと、消費者は自身で計算をしない限り、会計時にならないと本来支払う金額が分かりません。
また、税抜表示をしている事業者もいれば、税込表示をしている事業者もいるため、価格を比較しにくかったり分かりにくかったりといったデメリットもあります。
総額表示を義務化することによって、消費者が商品やサービスの購入を検討する際、すべての価格が税込表示されている状態になります。
値札やチラシを見ただけで、本来支払うべき価格が簡単にわかるようになり、比較や購入の判断がしやすくなるということです。
総額表示をしなければならない媒体は、値札やチラシだけではありません。EC事業者においては、ECサイトの商品価格の表示を変更するだけでは、義務を果たせているとはいえない場合が多いでしょう。
消費者に対して表示する価格であれば、総額表示する媒体は問いません。
EC事業者は、ECサイトの表示価格は変更しておきましょう。また、ダイレクトメールやインターネットサイト、チラシなど、広告出稿をしているEC事業者は、広告媒体の総額表示にも対応しておく必要があります。
ECサイトのほかに、実店舗を展開している事業者は、値札や陳列棚などの表示を忘れずに変更しておきましょう。
総額表示の判断をする際にポイントとなるのが、「総額表示するのは、購入の決定をするための媒体」であることです。
そのため、EC事業者は消費者が購入の決定をするための「ECサイト」が税込表示になっていれば、消費者のもとに届く商品の値札が税抜表示になっていても問題ありません。
例外として、口頭での価格提示は、消費税における総額表示義務に該当しません。
「総額表示義務」が適用されるのは、2021年4月1日からです。
現在の表示価格を総額表示にするのは、簡単にできることではありません。商品数や該当の媒体数が多ければ多いほど、変更の手間と時間がかかるでしょう。
2021年3月31日までは「総額表示義務の特例」が適用される
消費税率が10%に変更された、 2019年10月。消費税率を引き上げるとともに、価格の総額表示を義務化すると、レジの税率変更や表示価格の変更など、事業者は一気に対応に追われることになります。そういった事態を避けるために定められたのが、2021年3月31日まで適用される「総額表示義務の特例」です。
2013年10月1日に施行された「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)」の第10条により、2013年10月1日から2021年3月31日までの期間であれば「税込価格と誤認されないように対応していれば、表示する価格が税抜価格であっても問題ない」とされています。
そのため、店舗やECサイトにおいて、以下のような表示をする事業者が多くいました。
1,000円(税抜)
1,000円(税別)
1,000円(税抜価格)
1,000円(税別価格)
1,000円(本体価格)
1,000円+税
1,000円+消費税
※表示価格は税抜です
※価格はすべて税別価格です
「総額表示義務」は以前から定められていたことであり、2021年3月31日で特例の適用期間が終わってしまいます。上記のような価格表示は認められなくなるため、事業者は今のうちから価格表示変更の対応を進めなければなりません。