みずほ銀行のATMで障害発生。印紙税の影響か

紙の通帳を減らしたい。みずほ銀行のATM(現金自動出入機)障害は、そうした思いを遂げる過程で起きた。通帳をデジタル化してスマホなどで取引できる便利さを顧客へうたう一方で、背景にあるのが印紙税負担を減らす思惑です。

業界全体で年600億円を超え、低金利に苦しむ銀行にとって、重荷となっています。

そもそもシステム障害が起きた原因は?

今回のシステム障害のきっかけは、定期預金に絡むデータの更新作業における不具合でした。

「定期預金に絡むデータ更新作業」とは、大きく2つあります。

1つ目は、定期預金口座の利用状況に関するステータスの更新です。これは、例えば1年以上利用していない口座について、「稼働口座」から「不稼働口座」にステータスを更新する作業のことを指します。この作業は不定期に行っているものであり、障害が発生した28日には、この更新作業を45万件実施しています。

2つ目は、定期預金の書替に伴う更新です。例えば去年の2月末に預けた1年定期は、特段解約をしなければ、今年の2月末に継続書替(継続更新)されます。この作業は定期的に発生しており、28日に25万件の更新作業を実施しています。

システム不具合は、上記更新作業として、45万件+25万件=計70万件の作業が行われた結果、当該作業に必要なメモリのキャパシティを超えてしまい、システムにエラーが発生しました。

事前のテストで45万件の作業を実施しても問題ないことは確認していたようですが、25万件の更新作業とぶつかったことで、想定外の負荷がかかったと、みずほ銀行は説明しています。

ただ、月末に定期書替が多いことは容易に想像がつきます。そういう意味では、みずほ銀行の見通しの甘さとテスト不足については、非難を免れえないとともに、なぜあえて取引の集中する月末に作業を行ったのか、疑問が残っていました。

印紙税の削減が目的だった可能性

みずほの広報は、「システム開発の完了やお客さまへの告知スケジュールなどを考慮して、年間スケジュールの中で、基準日を設定の上、自動切り替え対象の確定・検証を完了後、自動切り替えのタイミングを決定した」と説明しています。

ただ、朝日新聞の取材によると、「時期を決めた当初の考え方は、印紙税(が理由)だった」(みずほ幹部)とのことです。

紙の通帳は、毎年200円の印紙税がかかります。そのため、銀行業界全体で600億円がかかっており、みずほ銀行でも数十億円の印紙税を支払っています。そこでメガバンクは、通帳のデジタル化を推進しています。

みずほ銀行では、紙の通帳を使わずネットで確認する「e-口座」を広げる方針を昨年8月に発表していました。そのような一連の流れがあるなかで、スケジュールを逆算した結果、定期更新の作業をこの時期にやらざるを得なかったようです。

みずほ銀行としては、約2400万の口座のほぼ半数が、数年後に「e-口座」に切り替わると見込んでおり、単純計算で年24億円の印紙税の軽減を見込んでいました。

今回のシステム不具合により、再び大きく信用を損ねてしまったみずほ銀行。信用回復には多額の時間とコストがかかるかと思います。24億円のコスト削減を行うつもりが、余計に大きなコストがかかってしまったと考えると大きな痛手となってしまいました。