世界的に人気を誇っているゲーム「フォートナイト(Fortnite)」を運営するEpic GamesがAppleとGoogleを提訴したと報じられています。
現地時間8月24日にApple対Epic Games訴訟の審問が行われ、裁判官が同件における初の判断が下されました。今回はなぜ訴訟に発展したのか、そして裁判官の判断はどの様なものとなったかを解説します。
8月13日にフォートナイトのアップデートが行われたですが、このアップデートの内容がAppleの逆鱗に触れてしまい、App Storeから削除されました。これを受けてEpic GamesはAppleに真っ向から立ち向かう姿勢を見せたのです。
問題のアップデート内容とは、App storeを介さずに、Epicの直接決済(Epicディレクトペイメント)で割安にゲーム内通貨を購入するオプションを追加したことで、Appleはこれアプリ内購入ガイドラインに違反しているとして削除に至ります。
このアップデート内容はiOSのみだけでなく、Androidアプリも同様に追加されており、GoogleもGoogle Playからフォートナイトを削除します。
Epic Gamesはアプリの削除をを受け、Apple、Googleを独占禁止法を犯していると主張して両者を提訴しました。
なぜEpic Gamesはガイドラインに違反してまで独自の決済方法を導入したのでしょうか。Epicはフォートナイトの公式ホームページを更新し、Appleがアプリ内課金から30%の手数料を徴収していることを強く批判しています。
この30%という手数料はEpicだけでなく、全てのアプリの販売価格とアプリ内購入の金額に課せられるものです。これをEpicは、「ユーザーに安価にコンテンツを提供するためにマージンを減らしたい」と主張し、不当なプラットフォームの独占だとしています。
そのため、Appleが削除対応を取ることを見越してわざと独自決済システムを追加し、独占禁止法違反の提訴の準備をしていたEpicは万全の態勢で全面対決を選びました。
Apple以外の手数料は以下になります。
- グーグルの「Google Play」 30%
- ソニーの「PS Store」 30%
- 任天堂の「Nintendo eShop」 30%
- マイクロソフトの「Xbox Store」 20〜30%
- Valveの「Steam」 30%
- Epic Gamesの「Epic Games Store」 12%
つまり、Appleのみが高額ではなく業界全体の相場が30%で、Epic Gamesはユーザーに安価にサービスを届けるポリシーを実践しているということになります。
Epic Gamesは、「AppleがIBMに対抗したマッキントッシュのCM」をオマージュした動画を公開しました。(上)
今回公開されたEpicの動画にもAppleのかつてCMにも、『2020年を「1984」にしないための戦いに参加してください』との記述があります。
1984とは1948年に出版された小説で「独裁者に支配、監視された近未来世界の恐怖を」描いたものです。つまり、かつてはAppleはIBMを独裁者と見立ててAppleが打倒するという構図になっていたのですが、今回は逆にAppleが独裁者でEpicが倒すという皮肉が込められた構図の動画になっています。
ここまで一方的にAppleがやられている様に見えますが、対抗してAppleは現地時間8月28日付でEpic Gamesの開発者アカウントを削除すると、Epic Gamesに警告をした模様です。
開発者アカウントが削除されてしまうと、Epicが開発した、数多くのゲームでも採用されている「Unreal Engine」というゲームエンジンを他の開発者達も利用することができなくなってしまい、多くのクリエイター達が損害を受けることになり金wません。
それに加えて、AppleはEpic GamesのCEOティム・スウィーニーからのメールを反論資料として裁判所に提出しました。このメールの内容が「顧客への直接課金を可能とする「App Storeでの特別扱い」を認めて欲しいという」ものです。
しかし、この証拠メールに一部欠損があり、削除された内容が「全てのiOSデベロッパーにも平等に提供して欲しい」というものでEpicだけを特別扱いしてくれと主張するには問題があるとされています。
現地時間8月24日に行われた審理のお互いの主張は以下です。
Epic Games
「自社関連の開発者アカウントが停止すれば、サードパーティのゲームやアプリで使用されているUnreal Engineの検証やサポートが不可能になり、広範囲に予測不能で回復不可能な悪影響を及ぼしかねない」
「もし開発者がUnreal Engineを忌避することになれば、今後EpicとAppleに司法がどのような判断だとしても、Epicにとって取り返しのつかない破滅的な結果になってしまう」
Apple
「明確な規約違反であることを知りながら追加した直接決済システムを削除して元に戻すだけで、フォートナイトをApp Storeに入る」
「Unreal Engineの開発者アカウントが停止されるのも規約違反からきている。被害が予測されているからこそフォートナイトを元に戻すだけで良い」
これを受けた審理の結果としては以下となりました。
「App Storeからのフォートナイト削除については、Epicが自ら招いた結果であって、以前の状態に戻すだけで容易にストアに復活させるとAppleが述べている以上、緊急の保全命令を出す要件を満たさない。」
「Unreal Engineを含む開発者アカウントの停止については、AppleがUnreal Engineの開発を妨げる行為は認めないとして差し止めを命じる」
現在、多くのプラットフォームでは手数料としてお金を取ることでビジネスをしている大手サービスはたくさんあります。
その中で、この手数料が下がればもっとユーザーライクなコンテンツが生まれる可能性を秘めているでしょう。今後の展開に目が離せません。