巨大IT(情報技術)企業による市場の独占を防ぐ規制案として「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が5月27日に成立しました。
年度内の施行を目指すこの新法案の影響があり、大手IT企業は新たに自主改善に向けた取り組みを行っています。
5月に成立したこの「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」は、巨大IT規制法とも呼ばれていますがどの様な法律なのか改めて解説します。
現在、世界各国で巨大化するEC企業に対して規制をする動きが強くなっており、日本においても以前から「一定の規制を設けるべき」とされてきました。この規制法では取引の透明化、個人データの保護、独占禁止法違反の防止、企業買収の審査の見直しを目的としています。
ネット通販、アプリストアでは巨大ITにより寡占化が進んでおり、中小の出展者が圧倒的に弱い立場にある中、公正な取引ができる様にすることが課題となっています。楽天の送料無料策や、アマゾンのポイント付与策などが、出店者にとっては不利な条件であると反発が広がり、公正取引委員会が調査しています。
具体的な内容としては、巨大EC事業を運営する企業は、契約条件の開示や契約変更時の事前通知を義務付けられ、企業は運営状況を毎年度、政府に報告し、政府はその報告を評価・公表する様です。もし、独占禁止法に違反する恐れのある事態を把握したなら、公正取引委員会に対処を要請する仕組みとなるそうです。
新法の対象となるのは大規模なECやアプリストアを運営する巨大IT企業とされています。一定の規模売り上げ高があり、国民生活や経済への影響が大きい企業を「特定デジタルプラットフォーム」と指定します。
対象企業は政令で定められるのですが、現状米アマゾン、グーグル、アップルそして国内企業の楽天、ヤフーが対象となる見通しです。
この新法が施行されることを受けてか、ヤフーや楽天などの大手IT企業は、情報開示や消費者保護の自主改善の取り組みを行っています。
この取り組みのの背景として新法以外にも、、取引先への不利な条件変更やSNSでの誹謗(ひぼう)中傷などの問題が発生し、対応を迫られているということ関係しているようです。
ヤフーは現在非公開のネット通販事業での出店者の審査基準について、今年中に公表すると発表しています。また、すでに公表しているネット通販での検索表示順位を決める基準についても、10月までにその理由について明確にするとのことです。また、4月から有識者会議を設け、5回にわたってネット通販のあり方やプラットフォーマーとしての社会的責任について議論し、今回の情報開示を決めました。
そして、ヤフー、楽天、アマゾン、メルカリは共同で「オンラインマーケットプレイス協議会」をそれぞれの自主的な取り組みを強化し、利用者がより安心して取引できる環境を整えることを目的として設立しました。活動内容は以下。
そしてLINEは、誹謗中傷や、偽りの情報によって社会の混乱に招くフェイクニュースなどの有害コンテンツをを監視するための指針を発表しました。
有害なコンテンツへの対応方針に関して8月末までパブリックコメントの募集しており、意見を反映したいと述べています。
今の私たちの生活では大手ITによるサービスが欠かせないと言っても過言ではないでしょう。今回の規制によって、中小の出店者が公正に取引を行えることでより経済が活発化するかもしれません。
この新法の成果は未知数ですが、各企業が取引の透明化を図ることで利用者は安心することができるでしょう。